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20周年特別企画:創業者インタビュー「すべてのモノに、新しい物語を。」

20周年特別企画:創業者インタビュー

『六畳一間から始まった、小さな挑戦。』


20年前、社会とのつながりを失い、絶望の中で見つけた一冊の本。そこからすべてが始まりました。

試行錯誤を繰り返しながら築いてきたリユースの道。リユースは単なる売買ではなく、「思い出の品が、次の誰かの希望につながる」ことを実感しながら歩んできました。

そして今、全国180以上の大学やNPOと提携し、本やリユース品を通じた支援の輪が広がっています。

20周年を迎えた今、これまでの軌跡、創業の想い、そして未来へのビジョンを語ります。

─ 創業20周年、おめでとうございます。まずは、起業のきっかけからお聞かせください。

ありがとうございます。
今こうして話せるのが不思議なくらい、20年前の私は社会とのつながりを完全に失っていました。

もともと番組制作の仕事に就いていたのですが、交通事故に遭い、そこから人生が一変しました。原因不明の体調不良に苦しみ、病院を転々とし、メンタルクリニックにも通いました。最終的に「脳脊髄液減少症」と診断されましたが、回復には長い時間がかかりました。

社会と断絶され、働くこともできず、「このまま終わってしまうのか」と絶望していました。そんな時、部屋の片隅に積み上げられた本が目に入ったんです。取材の仕事をしていた頃に集めたものでした。

─ その本を売ることが、起業の第一歩になったんですね。

そうですね。「とりあえず売ってみよう」と軽い気持ちでネットオークションに出したら、意外にもすぐに売れたんです。それがすごく嬉しくて、「まだ社会とつながることができるんじゃないか」と希望が湧きました。そこから本を仕入れて売るようになり、だんだんと事業として形になっていきました。

でも、最初の頃は本当に大変でした。六畳一間に本が積み上がりすぎて、床が抜けそうになるほどでした。 体調が万全ではなかったので、本を運ぶのも一苦労でしたが、それでもお客様の「ありがとう」の言葉が励みになりました。

─ そこから、倉庫を借りて規模を拡大していったんですね。

はい。六畳一間では限界を感じて、小さな倉庫を借りました。そこから少しずつ規模を拡大していきました。リユースのビジネスは単なる売買ではなく、「誰かの思い出の品が、別の誰かにとって新しい価値を生む」ことに大きな意味があると実感しました。

そんな時、2011年に東日本大震災が発生しました。

自分にも何かできることはないかと考え、本を被災地に届けるボランティアに参加しました。その活動がきっかけで、本のリサイクル募金「きしゃぽん」を立ち上げました。今では180以上の大学やNPOと提携し、多くの方々にご利用いただいています。

─ 事業が拡大する中で、大切にしてきたことは何ですか?

一番大切にしているのは、「三方よし」の精神です。売り手よし、買い手よし、そして社会によし。この三つが揃ってこそ、ビジネスは本当に価値のあるものになると考えています。リユースの仕事は、ただの「中古品の売買」ではなく、モノに新しい命を吹き込むこと。だからこそ、お客様にも、寄付をしてくださる方にも、そして支援を受ける方にも、それぞれにメリットがある仕組みを作り続けてきました。

─ 20年という長い道のりの中で、最も印象に残っている出来事は?

やはり、「最初の一冊が売れた瞬間」ですね。あの時、私は社会から切り離されていたと感じていました。でも、画面の向こうに「買いたい」と言ってくれる人がいた。それだけで、「まだ自分にはできることがある」と思えたんです。

そしてもう一つは、被災地に本を届けた時のことです。

本を受け取った方が「久しぶりに心が落ち着いた」と言ってくれたんです。
本には、ただの紙の束以上の力がある。そのことを強く実感しました。

─ 今後の展望について教えてください。

これからも、リユースの力で「幸せをいち早く届ける」ことを続けていきたいです。単にモノを売るのではなく、そこに新しい価値を生み出すこと。支えてくださった皆さまとともに、さらに大きな社会貢献ができる仕組みを作っていきたいですね。

─ 最後に、20年を振り返っての想いをお願いします。

気づけば、六畳一間の部屋から、大きな倉庫へと広がりました。でも、根本にある想いは変わりません。

「すべてのモノに、新しい物語を。すべての人に、新しいつながりを。」

それを実現するために、これからも歩み続けます。

─ ありがとうございました!

嵯峨野株式会社20周年ポートレイト

嵯峨野株式会社
代表取締役 大村 肇

1975年東京都生まれ、立川市育ち。工学院大学附属高校、立命館大学を卒業後、テレビ業界で報道・情報番組の制作に携わる。交通事故に遭い九死に一生を得て失業するが、リハビリ中に嵯峨野文庫を創業し、2010年に法人化。東日本大震災では被災地に小さな図書館を届け、リサイクル募金「きしゃぽん」を立ち上げ180以上の団体と提携。「人々に幸せを届けたい」という思いを貫き、2025年に創業20周年を迎える。

2025年2月25日(火)17:00 お知らせ